アメリカモラハラ離婚体験記⑤渡米後1か月。夫におびえる日々

モラハラ エピソード

オリバーの運転でアメリカテキサス州の自宅に着いた私たち。

『エマちゃん、やっとついたね~ここが私たちのお家だよ!』

 

沈黙を破るために明るくエマに話しかけた私に『私たちの家っていうのは変だ。これは俺がデザインして支払った家なんだから』と言い放ったオリバー。その場の空気は完全に凍り付いていた。

 

 

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美しい家

※実際の家ではありませんが雰囲気は似ています。

 

郊外の静かな住宅地に建つ、彼の家は、日本で育った私にとっては圧倒されるほどの大きさだった。

2階建てのレンガの家の前に立った私たち。

 

 

大柄のオリバーでも小さく見えるほど入口のドアは大きく、その上の半円の窓は教会を想像させるような素敵なデザインだった。この家を4年で払いきったと得意げに言われていたが、確かに4年間で家のローンを払いきったのは凄かった。

 

 

 

私は、エマを抱えたまま恐る恐る家の中に入った。お前の家じゃない、と言われたあとではワクワクした気持ちは全くなかった。私は人様の家にお邪魔するような気持で足を踏み入れた。

 

 

 

 

『俺一人で住むつもりだったから壁はぶち抜いた』

 

 

 

という通り、玄関のない家はリビングまで仕切りがある以外はただ広い空間が広がっていた。

 

 

 

 

2階に続くらせん状の階段を上ると、そこにも広い空間があり、彼の部屋と客用ベッドルーム、そしてシアタールームに続いていた。

 

 

 

 

 

『こっから落ちたら死ぬな…』

 

 

 

 

 

 

2階から1階のリビングを見下ろした私は思わず足がすくんだ。

 

 

 

とりあえず大喧嘩になってこっから落とされたり落ちることがないようにしよう…

私にはその素敵な空間はサスペンスドラマを想像させる恐怖の空間だった。

 

 

 

 

 

 

 

『俺がデザインした』という自慢の家を一通り紹介したオリバー。私には『ふーん…』という感情しかなかった。

 

 

そしてうっすらと

『やばいことになった…』と感じていた。

 

 

 

私は長時間のフライトの疲れ、そして子育ての疲れ、でその夜はゆっくり疲れを取るために休むつもりでいた。

ところが…。

 

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スキンケアに3時間

 

なぜこんな関係で私たちを日本からアメリカに連れて来たのか。それは彼の親戚も感じたことだった。

 

 

 

 

彼は愛情をかけられず育っていたから、他人に愛情を注ぐことをしてこなかったし『愛情』とは何かを知らなかった。

 

 

 

 

 

私は、自分と子供が彼に愛情を注ぐことで彼は少しずつ変わるのではないか、というわずかな、そして愚かな希望を持っていたのだった。しかし彼の『憎しみ』の感情は、私が思うよりはるかにずっと強かったのだった。

 

 

 

 

 

 

出産後の私は、体調が少し変わったようで、車に酔ったり肌荒れがひどくなったりするようになった。

 

 

 

長時間のフライトは、もともと荒れかかっていた肌の乾燥をさらにひどくし、私の顔は炎症を起こして真っ赤になっていた。

 

 

そして炎症は日に日にひどくなり、顔は3日間真っ赤に腫れあがった。

 

 

 

 

 

そんな私に気づいてか気づいてないのか、オリバーは肌荒れに何も触れなかった。

それどころか、娘より早く起きなかったと文句を言い始めたのだった。

 

 

 

 

疲れも取れず、肌荒れにも悩まされていた私が、肌の保湿をしようとバスルームに行くと、オリバーは言った。

 

 

 

『なにやってるんだ、エマを見てろ。そんなに顔さわりたいならもっと早く起きろ』

 

 

 

 

そういう彼が起きるのは私たちより遅かった。

 

 

 

沖縄に住んでいた時は

『オレはアメリカに帰ってからも6時には起きるからな。お前も早起きしないとだめだぞ』

と言っていたオリバー。

 

 

 

軍の生活では確かに早起きで規則正しかったため、彼の意志にかかわらず5時や5時半に起きるのは当たり前だったようだ。

 

 

 

 

ところが、その言葉を忘れたのか、オリバーが6時どころか7時に起きたのは始めの1週間だけ、その後には、毎日9時か10時に起きてくるという生活だったのだ。

 

 

 

 

自分は早起きするわけでもないオリバーは、エマの夜泣きも私任せ、そしてスキンケアで10分もかけていない私に

 

 

 

 

『お前はスキンケアに3時間もかけるからな』

 

 

 

 

と皮肉を言って立ち去った。

 

 

 

 

私は自分の感情をどう消化すれば良いのかわからなかった。

 

 

 

 

本当は言い返したい…

 

 

 

 

 

しかし、オリバーの言動が全く予想できず、いざとなっても頼る人がいない状況では何もいわず我慢するしかなかった。

 

 

 

 

オリバーは私の行動を事細かくチェックしていた。

 

 

 

 

エマより1時間前には起きろ、といい私をたたき起こすと、自分は再び眠りについた。

 

 

 

 

 

私はエマを連れて家の周りを散歩に出た。

 

 

オリバーの選んだ家が建つコミュニティーの中には、それはそれは大きな家が立ち並んでいた。

 

 

 

 

決してお金持ちの家、というわけではない。これらの家よりずっと大きな家々をのちにたくさん見ることになるのだから、オリバーの家は一般的な家だったようだ。

 

 

 

 

大きな家を見て歩くだけでも、少し気持ちが上がった。歩き始めたエマにとってもこの散歩はとても楽しいようだった。

 

 

 

 

 

家に帰るとオリバーがこっそりエマに話しかけているのを耳にした。

 

『君のママに道路に突き飛ばされたりしなかった?』

 

『ママにいじめられたりしなかった?』

 

 

 

 

 

私は、まだ言葉もわからないエマに彼のネガティブな態度がどれだけの影響を及ぼすのか気になっていた。

 

 

 

 

 

王様オリバーは、10時ごろに起きてきて台所に来ると、必ずすることがあった。

 

それは冷蔵庫やキッチンアイランドなどの汚れチェックだった。

 

 

 

 

冷蔵庫の取っ手を手ですりすりしては、その後にワイプする、キッチンアイランドテーブルを覗き込む、レンジやトースターの取っ手をチェック。

 

 

 

 

それが彼のルーティーンだった。

 

 

 

 

私が視界にいると、とてもわかりやすくそれをやってみせていた。

 

 

 

『気持ち悪いな…』そう思いながらも見て見ぬふりをしながらエマと遊んでいた。

 

 

 

 

 

 

夜になれば、ライトをつけると注意された。

 

 

 

 

『電気をつけるな』『まぶしい』『もっと暗くしろ』

 

 

 

 

 

一体この家ではライトは何の役目を果たしてるんだろうか…

そう思うほど夜になってもかなり暗めのライトしかつけさせてもらえなかった。

この家、幽霊屋敷みたい…

 

 

 

私は暗闇でそう呟いた。

 

 

 

 

オリバーはなぜかハロウィン用のガイコツ人形を『友人だ』と笑って紹介してきたし、ホラー映画やゾンビ映画が大好きだったのであながち幽霊屋敷っていうのは間違っていなかったかもしれない。

 

 

 

 

そして私はそのどれも大嫌いな人間だった。

 

 

 

 

 

オリバーは家の中で靴をはいたりゴム製のスリッパを履いていた。

そして私はいつもスリッパを履いていた。音がしないようなフワフワの素材のものだった。

 

 

 

ところがオリバーは

 

『お前の足音はうるさい』

 

『階段から象が降りてくるかと思った』

 

 

などとしょっちゅう言っていた。

 

 

 

 

 

『とんでもないところに来てしまった…』

 

 

 

 

 

 

そう思ったが遅すぎた。

 

 

正直、意地悪とは思っていたがここまで陰険だとは思っていなかったのだ。

 

 

 

 

 

しかし、これはまだ序の口だった。

 

 

 

 

 

 

『何も言い返せないアホな言いなり日本人女』と思った王様オリバーは

 

 

過去に自分が受けた祖母からのイジメによる恨みを私にぶつけ始めたのだった。

 

 

 

私が運命の人と思った男は、

『女嫌い』

のとんでもない横柄な王様だったのだ。

 

 

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なんであんな男を選んだのかわからない

 

オリバーは渡米後1カ月間、私たちをどこにも連れて行こうとしなかった。

 

 

 

『お店にいきたい』

『買い物一緒に連れてって』

『公園とか行きたい』

 

 

 

と言っても『お前はエマを見るのが仕事だ』

 

 

 

子供を見ていろ、といって車で5分の場所でさえも連れて行ってくれなかった。

 

そんなオリバーは、やっと自分の親戚や兄弟たちのところへ私たちを紹介し始めた。

 

 

 

 

ある日、私たちはエマより1歳年上の男の子のいる家族のお宅にお邪魔した。それはオリバーが仲良くしているといういとこの家だった。

 

 

道中、オリバーは私に静かにこういった。

 

 

 

『彼の奥さんのマデリン(仮名)は俺の事あんまり好きじゃないと思う』

 

 

 

 

 

何かあったのかな…と思いながら詳しくは聞かないまま、彼らのお宅へ行った。

 

 

 

 

彼らはとても気さくで良い人たちだった。マデリンさんはデパートの化粧品コーナーで働いているそうで、化粧をバッチリしていた。

 

 

 

 

”オリバーのいとこ”というだけで、私はちょっとためらって言葉を選んで話していた。

彼らがどんな関係かなにを共有してるのかわからず、変なことを口走ってのちに気まずい状況になったら困るなと思ったのだ。

 

 

 

 

私には知り合いも友人もいないから、今の時点で誰も敵は作りたくない…しかも次回いつオリバーが外に連れて行ってくれるかわからなかった。

 

 

 

 

 

マデリンさんは、私にいくつか質問した後、私とオリバーにこういった。

 

 

『私がエマを見てるから、いつでも二人きりでデートしてきなよ』

 

 

 

するとオリバーはためらいなくこう答えた。

 

 

 

『二人きりでどこかへ行く必要はない』

 

 

 

 

マデリンさんは驚いた表情でオリバーを見たあと、声を荒げて私にこういった。

 

 

 

 

 

 

『なんであなたこんな男と結婚したの!?この人と結婚する意味がわかんないわ!』

 

 

 

 

彼女の声は怒りに満ちていた。

 

 

 

 

私も”確かにそうだよな…私も逆の立場だったらそう言ってるわ”と思ったが、確かにオリバーと2人きりでどこかに行きたいとも思わないな、と思い苦笑いを返すのが精いっぱいだった。

 

 

 

この日、マデリンさんは私にたくさんの化粧品をわけてくれた。

 

 

帰り道、オリバーは私にこういった。

 

 

『彼女オレのこと嫌いなんだよ。昔彼女に女を紹介してもらったことがあったけど、その時のオレの彼女への扱いが気に入らなかったらしいわ』

 

 

 

 

そういうのもっと前に知ってたらな…

 

 

 

私は、なぜマデリンさんがあんなに嫌そうにオリバーを見ていたのかとてもよく分かった。

そして、同じ女性が彼に対してそういう思いを持っていることに対し、膨らんでいたオリバーへの嫌悪感が肯定されたような気がして少しほっとしていた。

 

 

 

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愛のかわりに金をやる

暑いイメージの強いテキサス州でも冬は寒くなる。そしてその年、珍しく雪が降った。

 

雪が降り積もる景色は、どこにいても素敵だなと思った。

エマがもう少し大きかったら一緒に雪だるま作れるのにな…

庭に積もった雪を見て私はそう思った。

 

 

そして、エマと遊ぶ代わりに文字を書いた。

 

その時私の心の中は不安しかなかった。

少しでも希望を感じたかった私は不安をかきけすように降り積もった雪の上に文字を書いた。

 

 

その思いはしばらく叶うことはなかった。

 

 

 

エマに懐かれていないオリバーがエマの面倒をみることはほとんどなかった。

遊ぼうと近づいてもエマが逃げてしまうのだ。

そうして、エマと私、オリバーとの距離はどんどん離れていった。

 

 

 

ある日オリバーが2階から私たちを見下ろして言った。

 

 

多くの軍人が俺みたい(リタイアまで努める)じゃないからな、もし俺がシングルだったらリタイヤしてから仕事なんてしなくてもよかった。でも今仕事をしなければいけなくなった

 

 

 

 

 

俺はお前の3倍稼げる…

 

 

 

 

 

そのセリフが頭をよぎった。

 

 

 

 

 

彼はきっとリタイアしてダラダラと好きなことして過ごしたかったのだろう。

 

 

 

家具を作ったりすることにも興味がある、と言っていた。

 

10ドルで購入した中古のソファーを骨組みだけになるようはがし、『自分の好みのソファーを作る』と言っていたこともあった。

 

ところがそのソファーはずっとガレージで骨組みのまま眠っており、やがて処分されていった。

 

 

結婚前には『大学に行って体育の教師になることにも興味がある』と言っていた。

しかし、それも今のところ叶うことはないどころか叶えようというそぶりも全くない。

 

 

一体何がやりたいのかはわからないが、言うことがよく変わるな、というのはこの時から感じ始めていた。

 

 

 

 

 

その日の夕方、私はクローゼットの中で泣いていた。

 

 

 

なぜ私はこんな目に遭わなくてはいけないのか、これからどうしたらいいのか。

渡米したばかりで誰にこんなことを相談できるっていうのか…。このまま日本に逃げ帰ればいいのか、それを彼は本当に許すのか…。

 

 

 

 

この時の私は、本当に弱い人間だった。

日本で幸せに生きてきて、人とこんな風に争った経験もなかった。

 

 

 

オリバーは私に部屋をくれなかったのでクローゼットが私の部屋だった。

そこで泣いている私にオリバーが近づいてきて言った。

 

 

 

 

『お前がもっとheartless(無情な)人間になればオレの気持ちがわかる。』

 

 

 

 

 

なんであんたのために私が人格変えなきゃいけないんだよと私は抵抗した。

 

 

 

『heartlessになるなんて無理』

 

 

『だったらもっとinsensitive(無神経)になってくれ』

 

 

 

もうこの人とは話にもならない、と絶望的になった私は、エマの将来を案じてこう聞いた。

 

 

 

 

『あなたが愛というものを知らなかったらどうやって子供にそれを教えるの?』

 

 

 

 

それに対し、彼は彼らしい、信じられない返事をした。

 

 

 

 

 

 

『金をやる。』

 

 

 

 

 

衝撃を受けた私は、そこで言葉を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この言葉をのちに彼はやはり否定した。

私は彼とのやり取りをこっそり日記に残していた。これは2月27日の出来事である。

 

 

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How smart are you?

 

この日オリバーは10時に起きてきた。

 

 

『オレはアメリカに帰っても毎朝早く起きるからな』

 

 

 

ここ1カ月ほど私の頭の中でこだましているこのセリフ。ついに私は彼に問いただした。

『あれだけ早く起きるって自信満々に言ってたのどーなったわけ』

 

 

 

するとオリバーは私たちがうるさかったから寝れなかった、と言った。

 

 

さらに『オレは枕はいらないのに枕を置くから寝る場所がないんだ』

 

 

と無茶苦茶なことを言った。

 

 

 

 

 

 

この頃から私は彼を、彼は私を避けるようになっていた。

オリバーは起きてくると私たちをチラリと見て、キッチンの汚れをジロジロと確認してから何かしら文句を言い、自分の朝食を作る、そして2階の自分の部屋にこもるか映画を見たりゲームをするという日課だった。

 

 

 

 

お店に連れて行ってくれないオリバーは、必要なものを伝えるようにと言い、自分一人で買い物に行った。

 

当然私が個人的に欲しいものなど買ってくれるわけもない。食料品、ベビー用品などだった。

 

 

 

始めはオリバーの気が向いたときに行く買い物時に欲しいものを聞かれていたが、そのうちスマホで作ったショッピングリストを共有し、それを更新するということになった。

 

 

 

その朝、2階でエマと遊んでいた私のところに近づいてきたオリバーは、いきなりこう言った。

 

 

 

『How smart are you?』

 

 

 

 

『?』

 

 

意味がわからず黙ってオリバーを見ると、彼は自分が作った共有リストを更新せずに私が新しくリストを作っていたことを責め始めた。

 

 

 

”食料品とそれ以外を別にしてあるからこのリストを更新してくれたらいいよ”

 

 

 

と一言いえば済む話。

 

 

だが、そもそもそんな口調で話しかけることのない王様オリバーにとってはこんな小さなことでも『この言いなり女を懲らしめる機会』になってしまうのだ。

 

 

 

ショッピングリストは使い始めたばかり。こんなことをで『お前はアホか』と暗に言いに来たオリバーを私は心の底から気味が悪い奴だと感じていた。

 

 

 

 

 

まだ喋ることのできないエマは、オリバーを避け、怖がっている私の様子を感じてしまったのか、オリバーが近づくと私のところに逃げてくるようになった。

 

 

私は焦った。

 

 

ここでオリバーの気が変わって家を放り出されたり大事なものを捨てられたりしたらどうしたらいいのか。

 

 

 

 

 

今考えれば、そんなの近所の人に助けを呼べばいいし、警察に電話するなり何とでもなるのだが、この時は渡米したばかり。土地勘もなければ英語での会話も今と比べると全然自信がなかったし、彼がなんでも言いくるめ、離婚やら親権やら全てが彼のペースで事が進んでしまうのではないかと恐れていた。

 

 

 

そして何より一番怖かったのは、その当時私のグリーンカードが条件付きだったことだった。

 

 

 

もしもグリーンカードが更新できず、私だけ日本に帰らなくてはいけなくなったら…

エマと一緒に帰れるなら切れたって構わない。でもエマはアメリカ国籍も持っている。もしオリバーが汚い手を使って私だけ日本に追い返そうとしたら…

 

 

法律を知らない当時の私はそれが最も恐怖となっていたのだ。

 

 

 

 

 

私は、エマに言った。

 

 

 

 

 

『エマちゃん、パパはエマちゃんのおもちゃやお洋服を買ってくれたりエマちゃんの面倒を見てくれてるからパパとも仲良くしようね。お家追い出されたら困っちゃうしね。』

 

 

 

せめてこのアメリカ生活に慣れて自由に動くことができるまでは…誰かしら知り合いなど頼れる人ができるまでは、、

 

この王様の言うことを聞いてご機嫌を取っておこう。

 

 

と思っていたのだ。

 

 

 

 

私はオリバーのことをよく知らなかった。

 

 

 

もしかするとこの人は急に暴力をふるうかもしれない。

 

 

そんな恐怖もあった。

ベッドの下には、防犯用と言っていた野球のバッドが隠してあった。

 

 

 

 

オリバーは大柄で筋肉質。

 

 

もしも殴られたらケガなくしては済まないだろう。

 

 

 

土地勘もなく英語力も足りず知り合いもいない、さらに貴重品は全てオリバーの家、

こんな絶対的に不利な状況でDVが始まったとしたら、エマはまだ喋ることもできない赤ちゃんだし私たちの逃げ場はない。

 

 

 

 

私は敗北感を感じて悔しかったが、しばらくオリバーの言うことを聞いて、機をうかがうことにした。

 

 

 

 

 

 

オリバーは人一倍『認められたい欲』が強かった。

 

 

この時は気づかなかったが、徐々にそんな一面があらわになっていった。

 

自分をほめる人がいれば、『〇〇がこんなことを言っていた』と私に伝え、自分をよく思っていない人のことをさげすむところがあった。

また、『銀行員が間違っていたから俺が教えてやった』というようなことも話していたことがあった。

 

 

 

 

一番苦笑いしたのは『オレはパソコンの知識がある。マイクロソフトやグーグルで働いている人が知らないことも知っていることがある』

 

 

というセリフだった。

 

 

 

この全く根拠も裏付けもない自信を叩き割ってやりたいと何度も思ったが、おそらく誰にも彼の自信をぶち壊すことはできないだろう。

 

 

もしかすると本人も自分の能力をわかっていて劣等感を隠すために言っていたセリフかもしれなかった。

 

 

 

 

 

最初の1か月は私を天国から地獄に突き落とした1か月だった。

この美しい牢獄で、私は今までの人生で感じたことのないストレスと恐怖を感じていた。

 

 

 

 

家族、特に母にはこんなこととても言えない。

『親孝行します』

 

と言い切った自分が、たった1か月で弱音を吐くなんてありえなかった。

 

 

 

しばらくして私は、友人に少しだけ打ち明けた。

 

 

『オリバーからうけてるのモラハラかもしれない』

 

 

 

私は当時モラハラとは何かよくわからなかった。

 

メディアで聞いたことはあったし、何となく心のイジメであることはわかっていた。

 

 

でも私がオリバーと付き合い始めた時は彼の心の闇をなんとか晴らしてあげたい、と思っていたため、アメリカに来て立場が逆転し、いいように彼のネガティブサンドバッグに利用され始めるまでそれがモラハラと気づかなかった。

 

 

友人は私に言った。

 

『言われたこととか日記につけておいたら?』

 

 

 

そして私は日記を書き始めた。

 

 

 

 

日記というよりは走り書きのようなメモだった。

日中は子育てをちゃんとしているかオリバーが監視していたし、私が使っていたパソコンは”彼がプレゼントしてくれた”という名目のMacbook。『お前にあげる』と言われたのに、管理者は彼。つまり、私が使っているが何かインストールするには彼の許可がいるし、当然彼がチェックできるようになっていた。

 

 

スマホは彼がファミリー契約したものだったし、彼が私のデータにアクセスしたり制限したりはいつでも彼のさじ加減でできたはずだった。

 

 

 

部屋ももらえない私にはプライベートはなかった。

 

 

日記を書いても捨てられるかもしれない。私は小さなメモ帳をちぎってそこに彼との出来事を書き留めては隠して持ち歩いた。

 

 

彼の言ったことをそのまま記録したかったが、万が一見られたら困る、と全て日本語で記録していった。

 

 

 

その後、彼に管理者を私に変更するようにお願いし、しぶしぶ変更してもらってからは、そこで彼とのやり取りをエクセルに記録し、パスワード保護した。

 

 

 

とはいえ、私には常に監視があったし、記録できる時間はかなり限られていたため、起こったこと全てを書き留められたわけではない。

 

 

この時にスマホが完全に自分の名義でなかったことも動画を録音することをためらった理由でもあった。

 

 

万が一私のスマホを彼が盗み見して彼とのやりとりを記録した動画があったとき、逆上した彼が何かしらの逆襲に出ることは目に見えていた。

 

 

この時の自分を私は知り合いにこう表現した。

 

『まるで北朝鮮にいるかのようだよ。自由なんてない』

 

 

 

 

アメリカにいるのに何言ってんだ、と相手は思ったようだった。

苦笑いしているのが聞こえたけれど、私の状況はまさしくそんな状況だった。

 

 

 

 

そしてこれから私は、オリバーの言動で精神的にどんどん追い詰められていくのだった。

 

続く

 

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