期限付きのビザを持つ移民という弱い立場の私に言いたい放題のオリバー。機嫌次第で態度が変わる彼の行動におびえながら過ごす毎日が続いていた。
どうしてこんなことになってしまったんだろう…。運命をなげいても何も変わらなかった。
オリバーはバツイチだったが、始めの結婚生活はたった6か月しか続かなかった。
そんな忍耐力のないオリバーが、私に離婚を切り出したのは、一緒に住み始めてからたった3か月の頃だった。
離婚を迫るオリバー
オリバーは私とエマが渡米してきて3か月後から『離婚』という言葉をたびたび持ち出すようになった。
それまでも離婚、と言ったことはあったけれど、本気のようには見えなかった。
それは、普通の人なら通常レベルの忍耐力を持ち、何とか努力してから決断するものだと思っていたし、2度目の結婚であるオリバーにはその忍耐力が多少あると期待していたからだった。
どちらかが浮気しているわけでもなかった。
私は日本で出会ったオリバーの同僚の妻亜美さんに、私はきっとオリバーと離婚すると思うとは伝えていたけれど、それは数年先のつもりでいた。
ところが、オリバーは本気だった。
5月のある日曜、オリバーと私は口論になった。
普段から私に『お前はスマホばっかり見ていて子供をみていない』と指摘し続けていたオリバーだったが、スマホでゲームばかりしているのを知っていた私は、オリバーがスマホを触っている時に言い返した。
『自分の方がスマホばっか触ってるじゃん』
私はゲームはしないし、SNSもしていなかった。でもこの当時ネットで勉強をしていたからスマホを見ることはあった。
というか、私には部屋もなく本もなく、娯楽もなにもない。何かを調べるのも読み物も勉強もちょっとした娯楽も、macかスマホしかなかったのだから、そんな姿をオリバーがよく目にすることがあっても不思議じゃない。
でも、オリバーは映画とゲームが好きだったから、しょっちゅうシアタールームに引きこもって映画を観るかゲームをしていたし、オリバーのスマホがゲームの画面になっているのも度々目撃していた。
ところがこの日、私に言い返されたことにぶち切れたオリバー。
『もうこんなことずっとやってられん!離婚しよう』
オリバーと離婚したいのはやまやまだったけれど、私には時間が必要だった。
それは、仕事を見つけて収入を得る時間、そしてこの土地や生活になれ、情報交換できる知り合いができるまでの時間…。
『…考える。』
自分の気持ちとは裏腹に、そう答えるのが精いっぱいだった私にオリバーは怒りながら言った。
『何を考えるっていうんだ!』
『…そりゃもちろんエマのことだよ。』
それは、本当だった。
赤ちゃんが生まれてから3歳になるまでの間…。
それは脳が80%形成される大事な時期。3歳までの育て方で人生が変わると言われる大事な時期。
その時まだ1歳だったエマが3歳になるまでは、子育てに集中したかったし離婚や引っ越しなどのゴタゴタは避けたかった。
私は、オリバーと離婚したくないからだと思われたくなかったがそう答えた。
それでも離婚を持ち出すオリバーに、私は言った。
『じゃあいいです。離婚します。』
子供がいなければ速攻別れていただろう。
でも大切なエマに何かしらの悪影響を与えるのは避けたかったし、避けられないのであれば最悪な時期だけは避けたかった私は必死で自分の感情を押し殺した。
離婚に同意しない私を追い詰めようと、次々と嫌味や暴言を吐くオリバー。
俺たちは合わない、お前は弱すぎるからだ、と捨て台詞を吐いて立ち去った。
私は心をズタズタにされていたが、弱いと言い続けるオリバーに弱みを見せたくなく必死で耐えていた。
なぜこんなにオリバーは私を責めてくるんだろうか…。
それは、彼自身が弱い人間で恐怖に駆られていたからだったのだけれど、当時の私は全くオリバーの考えや態度が理解できずに戸惑っていた。
そしてオリバーは再び私に離婚を迫ったため、諦め半分に私が『じゃあ離婚するんで、どうしたらいいの?』と答えるとオリバーは言った。
『今すぐって意味じゃない。もう少し経ってから…』
(なんじゃそりゃ!!!)
私は心の中で思いっきりツッコミを入れていた。
この人何考えてんだろうか…。
準備できてないならなんで何度も離婚を迫るんだろう。
おそらく、弁護士費用の準備ができてなかったこと。(オリバーは自分以外にお金を使うのは大嫌い)そしてエマが全くなついていなかったことで、自分に不利になるのではと考えていたんじゃないかと思う。
オリバーは一見大柄で寡黙などっしり構えた男だったから、しっかり考えてから話すタイプのように見えていたけれど、実際は後先考えず感情で口走ってしまう人間だった。
ただ、オリバーの毎日のダメ出しで自信を失っていた上に彼を全然理解できていなかった私は、そんなオリバーの言うことをほとんど信じてしまっていた。
私は弱いしダメ人間。。。
私は自信を失ってしまっていることを文子さんに相談した。
今思えば、これは完全にオリバーの『病気』に引きずり込まれていた。
笑顔が消えた私
オリバーはチャンスがあれば私を馬鹿にした。
雷でネットが使えなくなり、スマホが見れなくて困っていた私に『wifi切って契約してるLINE使えばいい』というだけのことを『お前はアホ』『常識がない』とまで言った。
行きたい場所には連れて行ってくれず、買って欲しいものも買ってくれず、たまに気が向けば自分が食べたいから買いに行ったファーストフードを私の分も買ってくるというのがオリバーだったので、私はその時飲み切れなかったシェイクを凍らせておいた。
普通なら捨てるけど、ファーストフードでさえ次にいつ買ってきてくれるかわからないから捨てられなかったのだ。
付け加えておくと、私たちの住む家の近くには歩いていける店などなく、また歩道さえない。1歳の子供をベビーカーに乗せて道を歩くなんてことはあり得ない。
シェイクを凍らせたのは初めて。だけれど、自由が利かないのだから今あるもので我慢せざるを得ない。
『シェイク凍らせる奴なんか見たことない』
冷凍庫のシェイクに気づいたオリバーはそう言ってシェイクを勝手に捨てた。
オリバーの話し方はとにかく威圧的だった。
機嫌が悪くなった私を指摘してきたオリバーに
『もっと親切な言い方してくれたら機嫌が直る』と言うと、昔虐待されていたという彼はこう答えた。
『オレは昔、年寄のビッチに育てられた。もうオールドビッチはいらない』
数日後、珍しくオリバーがエマにご飯をあげている間、スマホで勉強していた私のところにオリバーがわざわざやってきて、スマホをのぞき込んで言った。
『彼氏探してんのか?あぁ、それがお前の彼氏か?今度は白人にした方がいいぞ』
そう言ってニコニコしてエマの方に戻っていった。
さらに、出かける前に化粧をしている私にこういった。
『わざわざ怖い顔にしてるんだな』
私の顔からは笑顔が消えていった。
お前にエマを渡さない
離婚を迫ってきた日から2週間後。オリバーがさらに強い口調で離婚を迫ってきた。
『それで、いつ離婚するんだ?』
私が離婚に向けて具体的に動かないことにイラついたオリバー。私は渡米したばかりでオリバーの良いように離婚が進んでいくのは嫌だったためまだ離婚したくなかった。
私の背中を押したかったのか、この日はオリバーはとにかく私に暴言を吐きまくった。
『エマには価値があるがおまえにはない。 おまえは俺に一体何をしてくれてるっていうんだ、おまえは料理もしない、片付けもしない、エマを見る以外に一体何をしてるのか言ってみろ。』
料理作っても『オレは辛い物しか食べないしいらん』と文句ばかり、私の私物を置く部屋も棚もないのにどこに片付ければいいんだよ!お前のが価値がないわ!
と思ったが、言い返せばオリバーが逆上するだけ。とはいえ、言われっぱなしは悔しい。
私がその時なんと言い返したのかは覚えていない。
オリバーはよく私を盗撮していたそうだから、ぜひその動画を観て確認したいものである。
でも、パスポートなど大切なものが全てこのオリバーの家の中にある私が言い返せる内容なんて大したことないのは間違いなかった。
ところが、大したことなくても私が言い返せば倍返しするオリバーは私にさらに迫ってきた。
『お前のことを信用したことがない!俺がいつお前を信用したことがあるのか、言ってみろ』
私が何か答えるまで何度も何度も強い口調で問いただしてきた。
さらにオリバーは離婚してもエマをお前に渡さない…と言い始めたのだ。
やっぱり…。
オリバーはエマを奪いたいだけなのだ。
そしてこの彼の考えがしばらく私を苦しめることになる。
その後、オリバーに夕食を作ったが初日にしか食べなかった。
『オレは辛い物しか食べない』
これだけの暴言や虐めを受けて彼だけのために辛い物を作る気も全くなかった私は、オリバーのごはんを作るのをやめた。
お前を助けようとしているんだ
今でこそ、エマの前で自分が悪者に思われるような態度は絶対にしないオリバーだが、当時1歳のエマには何もわからないと思ったのか、暴言や嫌味をエマの前でも気にせず始めた。
私が『エマの前でそういうこと言うのやめて』
というと
『それじゃあ好きでもないおまえのことを好きなフリしてみせなければいけないっていうのか、ばかばかしい』
のちにエマの気を引くために、私に近づいてハグしようとしてきたりするオリバーだったが、この時はそう言った。
私は、少なくとも離婚、そして別居するまでは娘の前では努力して仲が良いフリした方が良いと思っていた。
それはたった1歳のエマが、私たちの間に流れる不穏な空気を感じ取っているのがわかったから。
オリバーは言った。
『俺がお前を嫌いだから正直に言うんだ、おまえはハッキリ喋らないだけだ』
そしてこう続けた。
『おまえも早くいい人見つけて幸せになれ、俺はお前を助けようとしてるんだ。俺といて幸せじゃないなら他の人と一緒になるべきだ。』
のちにオリバーは『オレは君を嫌いになったことはない、君は俺をヘイトしてるけど』と何度か言った。
この頃はエマが両親の言うことを理解する年齢になっていた。
散々私を嫌いだと言ったオリバーは、エマに『ママはパパのことが嫌いなんだ』と被害者ぶるようになるのだ。
ありがとう、は言うな
その日、オリバーは自分が食べたかった夜ご飯を私たちの分も買ってきた。
私が『ありがとう』とオリバーに言うと、『No need to say thank you』とぶっきらぼうに答えた。
たまに料理をしたり食器を洗ったりするオリバーに『ありがとう』というたびに『ありがとうなんて言わなくていい』としかめっ面されていた。
オリバーが私のために何かする、ということはなかった。
オリバーが料理をするときは、”俺の料理うまいだろ、すごいだろ”と自慢したいとき。
洗い物をしてくれるのは”皿洗いしてるからエマのそばにずっといられないの”と言わせないため。
オリバー曰く
『おまえのためにやってるんじゃない、エマのためだ。』
だから私がお礼を言うと、まるで私のために何かしてあげたかのような気分になって、敗北感を味わうのだろう。
『ありがとういうのは子供のためでもある。何かしてもらってお礼を言うのは当然でしょ』
と言っても渋い顔のままのオリバー。
そして『Don’t say it, it’s annoying! (もう言うな、うっとうしい)』と会話を打ち切った。
ありがとうと言われてウザい、と言われたのは生まれて初めてだった。
私は5年後にこのオリバーの態度がやっと理解できるようになるのである。
車を売る
友人の母文子さんに、私に車を買うように言われたあとたった1週間後に車を購入したオリバー。
その1か月後には
『車を売る』
と言い始めるのだ。
その日、オリバーは朝から機嫌が悪かった。
そして私に言った。
『車は100万で売るからな』
(ハア?? 買ったばっかで何言ってんの?)
オイオイ、、とあきれた私は、オリバーの態度にまたか、、と返事した。
『車は私のだと言ったよね?』
先日私が『ここに来た時に(ここはおまえの家じゃない)と言ったり、車買ってくれたのはありがたいが私に相談しないで決めてしまったし自分のだと思えない』といった時『車はyours』と言ったし、『でも名前はあなただ』というと『じゃあ名前を変えて欲しいのか』というやりとりをしていた。
確実に『It’s yours』と言ったオリバーはまたしても嘘をついた。
『俺たちの、とは言ったがお前のとは言ってない』
私が『絶対言った』
というとオリバーの怒りは大きくなっていった。
そして過去の話を持ち出し、あの時お前はこういったが実際はそうじゃなかった、だのということを何度も言い始めた。
『話を変えないでよ!』
そういう私のそばに来ては、あの時オレは…と同じことを繰り返し、たまらずその場を立ち去る私の後をついてきて同じことを何度も繰り返し言い続けた。
『離婚はいつするつもりだ、8月にするつもりだからな!いいな、わかったな!』
といい、私が返事をするまでつきまとってきた。
(気持ち悪い…!!!)
異常に興奮しているオリバーに気味悪さを感じていた。
最後にいつものように捨て台詞を言った。
『Why are you so worthless to talk?』
オリバーはこの日も前日も私を名前で呼んでいた。
アメリカに住む人はわかると思うが、アメリカでは夫や妻(彼氏や彼女)をファーストネームで呼ぶことはない。
honey, babe, daddy, mommyなどが普通。
たった1回ファーストネームで呼んだだけで激怒する人もいるくらい不自然なことなので、ケンカをふっかけたり愛情がなくなったときなど何かない限りはファーストネームで呼ぶのはバカにされたような気持ちにさえなるのだ。
オリバーは私を名前で呼ぶことが何度かあった。
日本人の私は激怒するほどの感情は動かなかったけれど、それが彼の私への侮辱であることはわかっていた。
私はオリバーの名前を呼ぶこともなければ、Honeyということもなくなっていた。
一切呼ばないようにしていたのだ。
honeyとも呼びたくないし、名前を呼べば挑戦状をたたきつけているようなもの。
オリバーがいらないケンカを始めることは目に見えていたからだった。
なるべく争いを避けたい平和主義の私に対して、オリバーは正反対のケンカ好きのようだった。
夜中にスマホをかざすオリバー
オリバーの嫌がらせは夜中にもちょくちょくあった。
朝に私をたたき起こして自分は二度寝するだけならともかく、夜中、寝ている私の顔にスマホをの光をわざとかざして寝顔を確認するということがたびたびあった。
私たちはすぐに家庭内別居をすることになるけれど、それまではこんな日々が続き、夜もぐっすり眠れずにいた。
ある晩、私はオリバーのスマホの光で起こされた。
エマのオムツがぬれている、ということだった。
でもそれは寝汗で、たまにあることだったから、これはおしっこじゃなくて寝汗だ、というと違うおしっこだとずっと言い張って怒っていた。
夜中にスマホの光で起こされるこっちの方が怒り心頭だった。
自分は少しの音でも寝れなくなるとこっちに怒りをぶつけてくるのに、自分は何をしても構わないと思っているようだ。
髪の毛
オリバーは女性の髪の毛が床に落ちているのが極端に嫌いだった。
健康な人の髪の毛は一日100本くらい抜けるという。
そんな髪の毛を毛嫌いしていたオリバーは、私が髪を沿ったら好きになる、というようなことを言ったこともある。
自分は軍人の時から髪を沿っていたから余計に嫌だったのだろう。
ところが、オリバーが他の人と違うのは、その髪の毛に対する行動だった。
オリバーは床の髪の毛を掃除する代わりに、集めては私のパソコンの上、私物の横、などに置いた。
捨てればいいのに、拾ってわざわざこれ見よがしに私の見える場所に置く、
これがオリバーなのだ。
投資物件
オリバーはカリフォルニア州に物件を保有していた。投資物件を持っていたのは友人ゾーイからのアドバイスではないかと思っている。
しかし、コソコソと陰険なオリバーはこの物件のことを私に伝えなかった。
オリバーがまだ軍人だったころに同僚夫婦と食事に行ったとき『おまえもカリフォルニアにコンド持ってるだろ』と同僚に言われたオリバーが仕方なく『まだ、そのこと彼女に伝えてないんだけど…』と言いにくそうに答え、バレただけだった。
この物件を軍人の知り合いに貸して家賃収入のあったオリバーは、それを自慢げに妹や弟たちに話していた。
ローンの返済は終わっていなかったが、賃貸料で相殺しているとのことだった。
オリバーは結婚してからも私に詳しいことは伝えてこなかった。
すでに夫婦仲が破綻していたため、私が彼の財産について詳しく聞くことはなかった。聞いてもオリバーは素直に明かす人間ではなかったからだった。
本来は夫婦間の財産は共有しなくてはいけない。
貯金を隠していたり、不動産などの資産を隠すのはもちろん、妻が共有の財産にアクセスすることを制限したり(お金を与えなかったり)妻が稼いだお金を取り上げるなどはfinancial abuseにあたる。
離婚の時に財産を隠していることは大きな罪。判明すればペナルティーが科される。
当時の私はそんな知識もなかった。
日本文化に慣れてしまっていた私にとって、夫か妻だけがお金の管理をしていてもう一方が財産にアクセスできない、知らないなどという状態が『違法』になることは想像すらしなかったのである。
この物件は、相殺しているとはいえメンテンナンス費用がかかったし、固定資産税も払わなくてはいけなかったのでその出費のたびにオリバーは愚痴をこぼしていた。
そしてある日、メンテナンスのためにカリフォルニアにいかなくてはいけなくなったオリバーは、私とエマを連れて行く代わりに、友人のゾーイと一緒に旅立った。
3日ほど帰ってこない、予定だった。
女性と一緒に3日出かけることに抵抗が全くなかったのは、オリバーに興味がなかったこと、そしてゾーイはとても信頼できる人だったこと、もっと言えば、3日間オリバーがいなくなってくれることの方が私にとっては天国だったからだった。
オリバーは嬉しそうに旅立っていった。
オレに挑戦するのか
オリバーのいない間に私は文子さんに会い、いろいろなアドバイスをいただいた。
結婚しているのだからオリバーが私を追い出すことはできないこと、何かあったら文子さんのところへ泊りにきていい、ということなどを聞き、安心した私。
ただ、この時に私にもっと知識があれば…。
何年もたった今、この時私はオリバーにこんなに怯えなくても法的に対抗できる策があったことを知ったが、当時の私はその日起きる予想もしない出来事を消化するのに精いっぱいだった。
カリフォルニアから帰ってきたオリバーは、そこに住んでいた住人男性と一緒に帰ってきた。
その知り合いが良い仕事をテキサス州で見つけたため、引っ越すとのことでオリバーの家に泊まることになったのだ。
少しだけ彼と二人で話したが、とても感じがよい人だった。
オリバーは、私に『アイツは良い奴のように見えるが実は…』とネガティブなことを言ってきた。
このオリバーの『他人を絶対に褒めない』態度はここでもあらわになった。
数日で出ていく彼の悪口を言う理由なんて全くない。なのにわざわざ彼の私生活を私に打ち明けるオリバーは本当に性格の悪い嫌なヤツとしか思えなかった。
文子さんからのアドバイスやこの感じの良い男性と話して少し気が楽になっていた私はオリバーに言った。
『離婚はするつもりもないし仕事を始めたいから1日3時間エマを見て欲しい』
オリバーは一瞬驚き、次にニヤリとして言った。
『どうした?誰かに会ったのか?なんか言われたのか?』
文子さんから私もここに住む権利があることを聞いたということを伝えると、オリバーはニヤッとして言った。
『オレに挑戦する気だな』
私は、単に時間を稼いで準備をしたかったのだけれど、結局この言葉がオリバーの闘争心に火をつけたようだった。
オリバーは話し合いには全く応じるタイプではなかった。
そして私たちの溝はどんどん深まっていった。
(続く)
コメント