ナルシシストはNPDの特徴を持つ人格障害ですが、この人たち、私たちが想像する以上にあちこちにいるように思います。ナルシシストは他人を精神的に傷つけますが、傷つけられてる本人でさえもしばらく気づかなかったりするので、ましてや第三者が理解するのは難しいんじゃないでしょうか。
私には関係ない…と思う方もいるかもしれませんが、私はナルシシストに影響を受けていない人はいないと思っています。芸能界にも会社にも友人の中にも家族にもいたりします。何も知らないと自分はもちろん自分の子供たちが被害を受けたり、もしかすると子供がナルシシストになってしまう可能性もあります。
今日はナルシシストってどんな人?ってことについて特徴やタイプを改めてまとめておきたいと思います。
ナルシシストとは
ナルシシスト(Narcissist)はNarcissistic Personality Disorder(NPD)という人格障害の人のことです。
日本語では「自己愛性人格障害」「自己愛性パーソナリティー障害」と言いますが、「自己愛」という言葉を使うのは紛らわしいのではないかと私は思っています。
Narcissistic Personality Disorder(NPD)であるかどうかは、DSM-5という米国精神医学会が発行する「精神障害の診断と統計マニュアル」記載の次の9項目のうち、5項目以上が当てはまる場合に医師によって診断されます。
1. 自分は重要人物であるという誇大な感覚を持っている。(自己の能力や才能を大げさに言ったり、ふさわしい成果がないのに優秀であると評価されることを期待する)
2. 無限の成功や権力、才気、美貌、あるいは理想的な愛にめぐまれる自分について空想している。
3. 自分は特別でユニークな存在であり、他の特別な人達、地位の高い人(機関)だけに理解され、またそういった人たちだけと一緒にいるべきだと考えている。
4. 他人からの過剰な賛美を期待している。
5. 特権意識が強い。(理由なく特別待遇や自分の意向に従ってもらうことを期待する)
6. 自分の目的を達成するために他人を利用することをいとわない。
7. 共感の欠如:他人の気持ちや欲求を理解しようとしない。
8. 他人を嫉妬する、または他人から嫉妬されていると思い込む。
9. 態度や行動が尊大で傲慢な傾向が強い。
もう少しかみ砕いて言うと、
そしてDSM-5にはないけれど他に
- 人や会話、状況をコントロールしたがる(支配欲)
- 平気で嘘をつく
- 責任を他人になすりつける
- 謝ちを認めない
- 自分のことばっか考えて行動する
- パッシブアグレッシブ(脆弱型)
などが代表的な特徴です。
※パッシブアグレッシブ…Passive(消極性)と、Aggressive(攻撃的)という、正反対の言葉がひとつになった言葉で、怒りを直接的ではなく間接的に表現する
ナルシシストは自己肯定感が低いため、自分を好きになれません。理想の自分が本当の自分であると信じて(能力の高い自分、羨望の的の自分など)それになりきろうとするため自己愛が強いように見えますが、そうではありません。
そもそもNPDのナルシシスト、ナルシシスト的人格者は、自分でその自覚がありません。ただ、ナルシシズムが強いナルシシストは自分がナルシシストであることを知っていることがあります。(が他人から言われても認めません)
ほとんどが自覚がないため自分から診断を仰ぐことはまずなく、他人から言われても納得しません。また、ナルシシストを治す薬はありません。
ナルシシストの中にはうつ病を患っていたり境界性パーソナリティ障害(BPD)など他の人格障害を併発していたりするので、その場合に医師の診断を受けて薬を処方されることはあっても、医師が積極的にNPDと診断することはあまりないそうです。
ナルシシストとナルシストの違い
ナルシシスト(Narcissist)は英語です。日本では蘭語のナルシストとして知られています。
アメリカではナルシストとは言わないし、ナルシシストという言葉は一般の人も使います。
ナルシシストとナルシストは同じ意味ですが、理解されている内容は違うようです。
ナルシシスト(アメリカ)・・・他人をイジメ(肉体的暴力も含め)精神を破壊し人生を狂わす、害のある人
ナルシスト(日本)・・・見た目をとても気にして、目立ちたがり、自分のことばかり考えてる自分大好きな人
これはナルシストについてまだ深く理解されていないことが原因じゃないでしょうか。
日本ではモラハラ(モラルハラスメント=精神的虐待)という言葉が浸透していて、モラハラ加害者は自己愛性人格障害の人とも言われますが、これがアメリカだとナルシシストに当たり、彼らによる虐待は「モラハラ」ではなく「Narcissistic abuse」と言われます。
ナルシシストの2面性
ナルシシストには見た目でわかるタイプと見た目にはわからないタイプがあります。
これを尊大型ナルシシスト、脆弱型ナルシシストと言います。
見た目に分かるタイプ…尊大型ナルシシスト(Grandiose Narcissist または Overt Narcissist)
見た目にはわからないタイプ…脆弱型ナルシシスト(Vulnerable Narcissist または Covert Narcissist)
尊大型ナルシシスト
- 自己中心的
- うぬぼれが強い
- 威張っている
- 注目を浴びたがる
- 薄っぺらい(表面だけ取り繕う)
- 批判にとても敏感
- 自分は特別だと思っている
- 権力に固執する
- 金を稼ぐ=成功
- 魅力的
- カリスマ性がある
- 自分の話はよくするが他人の話には興味がない
尊大型のナルシシストは日本でいう「ナルシスト」のイメージそのもので、アメリカでも「教科書通りのナルシシスト」と言われ、権力や金、人脈、地位に拘り、それを持っている自分をSNSで見せびらかして称賛を浴びたがる人です。社長・芸能人・有名人・成功者などに多いタイプです。
自分のことばかり話し、自信過剰で、権力のある人と自分より劣ると思っている人への態度が全く違います。
脆弱型ナルシシスト
- 内向的で穏やかそうに見える
- 批判にとても弱く敏感に反応する
- 他人の成功を妬み、足を引っ張ろうとする
- 陰湿ないじめをする(パッシブアグレッシブ)
- 仕事や恋愛が長続きしない
- ネガティブで鬱病になりやすい
- 被害者意識が強く、他人のせいにする
脆弱型ナルシシストは見た目にはナルシストとは程遠いように見え、第一印象は『優しそう』『大人しそう』と言う感じの人です。うつ病や他の人格障害を併発していることもあります。能力が高くないのに自分は能力が高いと信じ、「あの社長はオレの能力をわかっていない」と人のせいにします。また、被害者ぶっては他人を利用したり、怒るとパッシブアグレッシブになることがあります。仕事が続かず人間関係がうまくいかないことが多いです。
尊大型ナルシシストと脆弱型ナルシシストは全く正反対ですが、どっちかというわけではなく、両方の面をもっているが、どっちかが強いということです。コインの裏表で、挫折や成功など、あるきっかけで反対の面を見せることがあります。
ナルシシストの種類
ナルシシストにはどんな種類があるのかというサブカテゴリーは、エキスパートが独自にタイプ分けしています。
Wikipediaにも
臨床的にはどのサブタイプにおいてもその純形はほとんど見られず、特徴は少なからず重なり合っているのが普通である
とありますが専門家もいろんなタイプを兼ねているものだと説明しています。
例えば、カリフォルニア州のナルシシストエキスパート、ドゥルバスラ博士によるナルシシストのタイプ8つはこちら。
そして65000件のカウンセリング経験のあるテキサス州のナルシシストエキスパート、カーター博士によるナルシシストのタイプ7つはこちら。
ドゥルバスラ博士は
- 尊大型ナルシシスト
- 脆弱型ナルシシスト
- 悪性ナルシシスト
- コミューナルナルシシスト
- 怠慢ナルシシスト
- 世代・文化的ナルシシスト
- 良性ナルシシスト
- ハイブリッドナルシシスト
カーター博士は
- ステイタスに拘るナルシシスト
- 特権意識ナルシシスト
- 悪性ナルシシスト
- 脆弱型ナルシシスト
- 繊細な被害者ナルシシスト
- 知ったかぶりの頑固なナルシシスト
- コントロールフリークナルシシスト
と分けています。
2人の専門家のタイプ分析で共通しているのが、脆弱型ナルシシスト、悪性ナルシシスト。ステイタスと特権意識は尊大型と同じではないかと思います。また、被害者ぶるのは脆弱型ナルシシストの特徴でもあります。
一般的に良く聞くのは、尊大型、脆弱型、そして悪性ナルシシストです。
反社会性パーソナリティー障害
ソシオパス・サイコパス、と言われる反社会性パーソナリティー障害があります。
【反社会性パーソナリティ障害】
個人的利益や快楽のために違法行為,欺瞞行為,搾取的行為,無謀な行為を行い,良心の呵責を感じない。一般集団での有病率はおそらく約1~3.6%である。男性のほうが女性より多く(6:1),強い遺伝要素がある。
規則や法律を守らない、暴力行為に走る、他人を傷つけてもそれを正当化し、全く反省しない人格障害です。
どちらも他人の気持ちを理解することができません。
ソシオパスとサイコパスの違いは、ソシオパスは育った環境によるもの、サイコパスは生まれつきです。
この反社会性パーソナリティー障害を持つ人は全てナルシシストです。
こういったイメージです。
赤くなるにつれてナルシシズムが高くなり(悪性度が高くなる)、黒い部分は凶悪な犯罪を犯す可能性もある非常に危険な反社会性パーソナリティー障害です。サイコパスは100人に1人くらいと言われているようですが、そこまでいかないレベルのナルシシストは私たちの身近にいてもおかしくありません。
まとめ
ナルシシストは、一旦特徴を理解すればとてもわかりやすい人たちではないかと思います。ただ、いろんな特徴を併せ持っていたり、尊大型と脆弱型という真逆の様子を見せたり、また、仕事ができる人もいればできない人もいるので、なぜか、というのを知らないと混乱します。
精神的暴力だけの人もいれば、肉体的暴力に発展する人もいます。謝る人もいれば謝らない人もいます。
そして、一番問題なのは他人に害を与えるナルシシストは私たちが想像する以上にあちこちにいるのに、多くの人がまだよく知らないということではないでしょうか。
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